先日、『いつか日本で働きたいと思っているあなたへ 日本在住外国人による 日本で働くことについてのホンネ座談会』が行われました。座談会の模様を収録した動画内では、ファシリテーターに北海道医療大学先端研究推進センターの伊藤優子さん、静岡県立大学の鈴木俊文准教授を迎え、日本で働く外国人のみなさんに日本の魅力や解決すべき課題などを、思う存分語っていただいております。
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動画の幕を飾る第3部では、第1部、第2部にご出演いただいた日本在住外国人11人に“将来・ビジョンについて”というテーマで、改めてお話をうかがっています。
伊藤:みなさんこんにちは。『日本在住外国人による 日本で働くことについてのホンネ座談会』の第3部では、第1部、第2部に出演した外国人のみなさんに引き続きご出演いただき、鈴木敏文先生とともに“未来”――これからの展望についてうかがっていきましょう。
まずは、これまでみなさんが日本で働いてきたなかで、「ここが変だな」「ここは変わってほしいな」と感じたところがあれば教えていただきたいと思います。
ティファニーさん(フィリピン):日本は残業が多く、ミーティングも頻繁にありますが、もっと効率的に働けるのではないかと思います。コロナ禍が収束しても可能な限りテレワークを継続し、フレックス制度を導入するなど、柔軟な対応でワークライフバランスを改善してもらいたいですね。女性や障害者の方々が、もっと働きやすい環境づくりができれば、日本企業はさらに魅力的になると思います。
ラブリーさん(フィリピン):日本ではワーカーホリックになっている方が多いです。日本人だけではなく、日本で働く外国人にも、業種を問わずその傾向がありますね。
ステラさん(フィリピン):私が働いている長野県では、お仕事が夜遅くまで長引いてしまうと、帰りの交通機関がなくなってしまっていることがあります。日本に来て日が浅い外国人の多くは車を持っていないので、困ってしまいますね。母国のフィリピンでは、ジープニー(乗り合いタクシー)が一日中走っているので、便利なのですが……。
エンさん(ベトナム):いわゆる“飲みニケーション”は変ですよ。仕事の関係にプライベートを持ち込むような慣習は理解しにくいです。私たちも、大きなイベントやパーティーの時はみんなで楽しみますが、それが毎週となると……。
鈴木:日本では、ホンネで語る場所として“飲みニケーション”が重宝されていますが、“働き方”とともに“自分の時間”をとても大事にされている外国人のみなさんには馴染みにくいのかもしれませんね。振り返ってみると、僕や伊藤先生もワーカーホリック気味なところがあるかもしれません。
リンさん(ベトナム):「変だ」ということではないのですが、水道の水がそのまま飲めるのには驚きましたね。ベトナムでは煮沸してからでないと飲めないので。
ホアイさん(ベトナム):日本には自動販売機が本当に多いですね。飲み物だけでなく、さまざまな種類があるのにもびっくりしました。
伊藤:生まれたときから日本で暮らしているとわからないものですが、海外の方から見ると、やはり独特な文化があるのですね。それでは、みなさんの将来のビジョンについてうかがってみたいと思います。みなさんは、このまま日本でお仕事を続けていきたいのか、日本での経験を活かし、母国に帰って活躍していきたいのか、どちらでしょう?
アグンさん(インドネシア):私は日本が大好きですが、日本で学んだことをインドネシアに持ち帰り、自分の会社を立ち上げるのが夢です。日本では、外国人向けのツアーガイドをやっていたので、帰国したら旅行会社を立ち上げたいですね。また、日本には外国人技能実習生を受け入れる制度があるので、日本に行くために勉強しているインドネシアの人たちを送り出す機関も将来性があるのではないかと思っています。きっとお金持ちになれますよ(笑)。
アユさん(インドネシア):私もいずれインドネシアに帰るつもりです。日本語学校の先生か、通訳ができる観光ガイドになりたいと思っています。
ティリーさん(スリランカ):私は日本で生活をしていこうと決めました。始めて4ヶ月目になった今の仕事が、とても面白いというのが理由のひとつです。これまで4年ほど旅行関係のお仕事をしていたのですが、新型コロナウイルスの影響でお休みになって、すっかりキャリアが停滞してしまいました。このままではいけないと思い、新しい仕事を探しましたが、これまでの経験が活かせるような仕事がなかったのです。そこで割り切って考え、まったく新しいことに挑戦し、現在は貿易の仕事をしています。ほとんどゼロからのチャレンジにも関わらず、日本人の社員みんなが私をサポートしてくれているので、できるだけ長く勤めさせていただきたいですね。
伊藤:みんなが大変なコロナ禍にあって、新しい道を切り拓いていくバイタリティには感心しきりです。飽くなきキャリアアップを目指すその姿勢は、日本で働きたいと考えている人たちにとって、大きな励みになると思います。
アシニさん(スリランカ):私はスリランカに帰国し、老人ホームを作って、両親と一緒に暮らしたいと思っています。
シトゥミニさん(スリランカ):私は介護の勉強を続けて、日本で働いていきたいです。日本はとても安全で、住みやすい先進国ですからね。
鈴木:諸外国の方々が、介護分野で活躍していただけるのは本当にうれしいですね。
伊藤:さて、全3部にわたってお送りしてまいりました、『日本在住外国人による 日本で働くことについてのホンネ座談会』ですが、そろそろお時間となりました。最後に、鈴木先生からまとめのお話をしていただきたいと思います。
鈴木:みなさん、ありがとうございました。働く内容そのものより、“働き方”についてのお話がとても多かったのが印象的でした。“暮らし方” のお話がセットになっていたのも特徴かなと思います。
また、いつかは母国に帰ろうと考えている方もいらっしゃいました。単に働く場所を変えるという発想ではなく、日本で習得した技能を母国に移転する“つなぐ”役割を担いたいというキャリア展望をお持ちであることに、とてもワクワクする気持ちです。
伊藤:私も、みなさんのお話を聞くにつけ、さまざまな人との関わりのなかで、本当に楽しそうにお仕事をしていらっしゃるなと、うれしい気持ちになりました。これからも外国人の方々と一緒に働きながら、日本の未来を考えていきたいですね。
本記事では座談会の模様を収録した動画から、一部のトピックをご紹介しました。動画内では、日本独自の文化について、在日外国人のみなさんが、さらに深堀りしてお話してくださっています。全編は下記よりご覧ください。
03.将来・ビジョンについて『いつか日本で働きたいと思っているあなたへ 日本在住外国人による 日本で働くことについてのホンネ座談会』