日本で働く外国人介護人材と聞いて、どのような職場を思い浮かべますか?
多くの人は特別養護老人ホームやグループホームなどの高齢者施設を思い浮かべるかもしれません。
しかし、実は外国人介護人材は高齢者施設だけでなく、病院や診療所といった医療施設、介護医療院、介護老人保健施設、通所リハビリテーションなど、医療と介護が連携する現場でもたくさんの外国人介護人材が活躍しています。
そこでは、介護スタッフは医師や看護師、理学療法士などの医療従事者と協力しながら、患者さん・利用者さんのケアをしています。
病院で働く介護スタッフの位置付けは看護助手や看護補助者となります。注射などの医療行為を行うことはできませんが、患者さんの身体介護、生活支援、看護師の補助業務を通じて、医療チームの大切なメンバーとして働きます。この役割分担により、患者さんはより良いケアを受けることができます。
今回は、実際にこうした現場で働いている4名の外国人介護人材と、彼らを支えている日本人スタッフにインタビューを行いました。医療と介護が連携する現場ならではのやりがい、日々の仕事の内容、そして外国人介護人材を支える受入れ体制について、実際に働いている人たちの声をお届けします。
Contents:
取材にご協力いただいた法人:医療法人 西中医学会
大阪市南部を拠点に医療・介護・在宅支援を切れ目なく提供している医療法人です。大阪市東住吉区の西中病院や西中介護老人保健施設を中心に、通所リハビリテーション施設、訪問介護、ケアプランセンター、定期巡回随時対応型訪問介護看護などのサービスを展開しています。

医療法人 西中医学会の外国人介護人材
リンさん(ベトナム):2016年来日、病院勤務
モーさん(ベトナム):2019年来日、老健施設勤務、介護福祉士
トゥイさん(ベトナム):2022年来日、通所リハビリテーション勤務
アクバルさん(インドネシア):2022年来日、通所リハビリテーション勤務

左から、リンさん、モーさん、トゥイさん、アクバルさん
――皆さんが日本で介護の仕事をするようになったきっかけを教えてください。
モーさん:
私はベトナムで祖母の介護をしたことがあります。2019年に技能実習生として日本に来ました。その後、特定技能に変更する時に登録支援機関が今の施設を紹介してくれました。施設を見学した時に、職員がお互い助け合いながら仕事をしている様子を見ました。その雰囲気がとても良いなと思いました。
トゥイさん:
日本に来てから名古屋の日本語学校に1年間通いました。その後、名古屋の障害者施設で働き始めました。その施設ではあまり話をしない利用者さんが多く、私はもっと利用者さんと話したいと思うようになりました。そこで、友達の多い大阪に移ることを決めました。いくつかの施設を紹介してもらいましたが、この施設の近くにある長居公園の雰囲気がとても良かったので、ここで働くことにしました。
アクバルさん:
僕は兵庫県の日本語学校に留学するために日本に来ました。留学中、アルバイト先を探していましたが、学校が山の中にあったので近くには老人ホームしかありませんでした。それで特別養護老人ホームでアルバイトをしましたが、働いているうちに介護の仕事が面白くなったので、介護の仕事をすることにしました。
リンさん:
私は2016年に留学生として日本に来て大学で通訳になるための勉強をしていました。大学を卒業した後は監理団体で介護の技能実習生の通訳などの仕事をしていました。そのうちに自分でも介護の仕事がしたくなって、ビザを「技術・人文知識・国際業務」から「特定技能介護」に切り替えました。
この施設を選んだのは、面接の時に2〜3年以上働き続けている外国人もいるという話を聞いて、日本人と外国人の区別なくいっしょに働けそうだと感じたからです。
――皆さんそれぞれの施設での仕事について、具体的に教えてください。
トゥイさん:
通所リハビリテーションでは、その日に何を担当するかで仕事内容が違います。入浴担当の日はほぼ一日中入浴介助をしていますし、レクリエーションや体操を担当する日もあります。利用者さんの送り迎えを担当することもありますし、医師の診察に付き添うこともあります。
元気な利用者さんも多いので、話をするのがとても楽しいです。
アクバルさん:
通所リハビリテーションには104歳の利用者さんもいますが、自分で歩ける人には自分の力で歩いてもらうようにしています。これが日本の介護の考え方です。
モーさん:
介護老人保健施設では早出、日勤、遅出、夜勤の4つのシフトパターンがあります。
基本的には利用者さんが日常生活を送るうえで必要なケアをしますが、仕事の内容はシフトや担当によって違います。例えば利用者さんの爪切りのようなことも看護職員が行っています。ベトナムでは家族がすることなので、最初は驚きました。
リンさん:
私は病院で働いています。病院の患者さんは4人部屋で生活していて、寝たきりの人が多いです。午前中は申し送り、おむつ介助、シーツ交換。昼は食事介助をして、夕方はナースコールへの対応。週に3回入浴があります。夜勤の時は夕食の食事介助、おむつ介助をして、翌日の日勤スタッフへの引き継ぎまで担当します。痰の吸引などは看護師さんの仕事で、私たちは行いません。

――リンさんは以前グループホームで働いていたそうですね。違いはありますか?
リンさん:
グループホームで通訳の仕事をしていた時は、利用者さんは体調が悪くなると病院に入院してしまい、その後はどうなるか分かりませんでした。病院での仕事の内容はグループホームよりも難しいですが、日本の介護や医療についてもっと深く知ることができるので、チャレンジしたいと思いました。病気の重かった患者さんが元気になったのを見た時は本当に嬉しかったし、どんなケアをすれば元気になれるのだろうかと興味が湧きました。
――最初は大変だったこともありますか?
モーさん:
初めは正しい介護の仕方が分からず、間違った介護のやり方をして腰を痛めてしまいました。それからは正しい介護方法に特に気を付けています。
トゥイさん:
仕事で使う日本語が大変でした。利用者さんの前でレクリエーションの司会をする時など、伝えたい日本語がなかなか出てこなくて困りました。
リンさん:
病院では亡くなった患者さんの死後処置もしますが、初めて亡くなった患者さんの顔を見た時はショックでした。これはグループホームでは経験できないことでした。
アクバルさん:
インドネシアには認知症の人が少ないので、日本に来て認知症の人が多いことに驚きました。初めのうちは認知症の人の行動がよく分からず、どう対応すればよいか困ることが多かったです。
モーさん:
私も最初は認知症の利用者さんが急に怒ったり大きな声を出したりするので怖かったです。利用者さんから「家に帰りたい」と強く言われたときは説得をしても聞いてくれず、「警察を呼べ」と言われたこともありました。そんな時に先輩や同僚からどうすれば良いか教えてもらいながら、少しずつ対応の仕方を学んでいきました。
リンさん:
私は介護の仕事をしているうちに、気が長くなったと思います(笑)。以前は高齢者がわがままを言っていたりするのを見るとイライラすることがありましたが、介護の仕事を通して高齢者のことが理解できるようになったし、「この人はなぜこういうことを言うのかな」と考えるようになりました。
アクバルさん:
僕も変わりました。介護の仕事を始めてから、街で道を渡っているお年寄りを見ると、気を付けて見守るようになりました。人間としてのレベルがアップしたと思います(笑)。

――モーさんは今年介護福祉士の国家試験に合格しましたが、どのように勉強しましたか?
モーさん:
私は自分でテキストを買って勉強しました。そして、国家試験の過去問題をたくさん解きました。問題をたくさん解くことが一番大事だと思います。
トゥイさん:
私は2026年1月にある第38回の国家試験を受験する予定です。長く日本に住んで介護福祉士の資格を取ったベトナム人が先生をしてくれるオンラインコミュニティがあって、とても助かっています。
――最後に、日本で介護の仕事をすることを検討している海外の方へメッセージをお願いします。
リンさん:
仕事はとても忙しいですが、色々なことを学ぶことができてチャレンジしがいのある仕事だと思います。
アクバルさん:
周りの人とのコミュニケーションが大切なので、日本語をよく勉強する必要があります。一生懸命頑張れば職場の人達も必ずサポートしてくれますよ。
トゥイさん:
私は利用者さんと話をするのが楽しくて介護の仕事を続けています。利用者さんには自分の家族のように丁寧に接してほしいです。
モーさん:
日本の介護施設は働きやすい環境が整っています。介護福祉士の資格を取れば、さらに活躍の場が広がります。ぜひ挑戦してください。
医療法人 西中医学会で外国人介護人材の支援を行っている平松さんのお話
私たちの法人は将来的な人材不足を見据えて、早くから外国人介護人材受入れの準備を進めてきました。
私が何より大事にしているのは、遠い国から来てくれた人たちが困ったり悩んだりした時に話しやすい環境を作ることです。登録支援機関にも協力してもらい、気軽に相談できる体制を整えています。一人で慣れない日本に来て不安でしょうから、生活面の小さな不安にも、登録支援機関と力を合わせて外国人介護人材に寄り添うことが大切だと感じています。
また、介護福祉士の国家資格を取れば、家族も一緒に日本で長く働き続けることができるようになります。介護福祉士取得を目指す人には、日本語講座や介護福祉士国家試験対策講座を開くなど、しっかりと学習支援を行っています。
私の一番の願いは、せっかく日本に来てもらうのだから、外国人介護人材に楽しく笑顔で働いてほしいということです。彼らが安心して生き生きと働ける環境を作ることが、結果的に法人全体の医療・介護の質を高めることにつながると信じています。