日本の地方で経験できる、最先端の介護技術(後編)

日本の地方で経験できる、最先端の介護技術(後編)

日本では、介護にさまざまな最先端の技術を導入する取り組みが行われています。その先駆けとして注目されるのが、東北の秋田県で介護事業所を運営する「あきた創生マネジメント」です。後編では、ICTツールの活用例と日本の地方で働く魅力について、代表の阿波野聖一さんに聞きました。

 

阿波野聖一

株式会社あきた創生マネジメント代表取締役。現在秋田県内で3法人5事業所を運営。近年は海外人材起用の好事例としても全国から注目され、セミナー等多数登壇している。

 

あきた創生マネジメント

https://rin-sousei.com/

デジタル化の推進

https://rin-sousei.com/forthefuture/digital

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「LINE WORKS」がコミュニケーションのハブ

運営もコロナの時期はやはり大変でしたが、この1、2年で安定してきました。「LINE WORKS」を中心とした、デジタル化が大きく影響しています。例えば新しい海外人材が入ってくると、その人と指導係や周辺のスタッフ等との間で、すぐにLINEグループができます。さまざまな情報を、みんなでタイムリーに共有しあっています。

 

利用者さんのご家族とのやりとりにも、「LINE WORKS」を使っています。多くの方がLINEのアカウントをお持ちなので、担当スタッフとのグループも作りやすく、スタッフから利用者さんの状況を共有したり、ご家族からは情報を提供してもらったりしています。

 

「LINE WORKS」をハブとして、インカムのシステムなどさまざまなICTツールを連携させています。他にも、介護記録にはテキストだけでなくSNSのように写真や動画を投稿できる「ケアコラボ」、ショートステイの方の忘れ物を防ぐ持ち物チェックアプリ「介護サプリ」、事務方の会計システムなどを利用しています。

 

すべてはコミュニケーションを円滑にし、利用者さんとスタッフ、スタッフ同士の信頼関係へとつなげるためです。例えば利用者さんとスタッフが、スマホで一緒に写真や動画を撮って、見せ合う。そんなスマホの使い方も、あたたかい関係づくりを育てるもの。私たちには人と人との関係、人間性を大切にしたい思いが根底にあります。

 

 

地方から、地方へ

インドネシアと秋田は、相性がいいと思うことがあります。インドネシアのイスラム教の女性たちが頭に巻く「ヒジャブ」が、昔、秋田の女性たちが寒さ対策に被っていた「ほっかむり」と似ていて、年配の利用者さんたちには親近感があるようなのです。

「寒いだか? 夏なのに」と利用者さん。

「寒くないけど、宗教で付けてるんだよ」と海外スタッフ。

お互いに秋田弁で、なんとも微笑ましい光景です。

ただ、コロナの時は、日本人とインドネシア人のメンタルの違いを感じました。日本人スタッフは、自分も感染するかもしれないと心配していましたが、インドネシアの人たちは誰もそんなことを言いませんでした。あの頃は、インドネシアのスタッフの明るさと笑顔に救われた気がします。

 

以前は、首都ジャカルタ周辺地域の若者たちが日本へ来ていました。今は、インドネシアの地方から日本の地方へという流れができつつあります。実際、地方出身者からは、都会の人が多いところより、人が少ない方がいいという声もあります。東京は遊びに行くところ、生活と仕事は地方。海外人材とのコミュニケーションを数年経験して、その方が合うのではないかと思っています。そして秋田は、インドネシアでも主食である「米」がおいしい。みんなナシゴレンなどを作って、日本人よりよく食べますよ。日本の米は、おいしいそうです(笑)。